皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?

「礼を言われるほどのことでもあるまい」


リオネルはあのときのことを覚えていたようだ。あの日は夜会もあり、ほかの令嬢たちとの交流もあっただろうから、エリーヌとの些末な一幕など忘れていると思っていたが。

そういえばパーティーで会ったときにも、リオネルは訝しげな表情をしていた。


「どこかで私に似た人がいたのでしょうか」
「……そうだな。そうなのかもしれないな」


なんとなく納得していないように返したリオネルが立ち上がる。


「そろそろ休もう」
「あ、あの、陛下もここでお休みになられるのですか?」


子を作らないと言うから、てっきり別室で寝るのかと思ったが、リオネルの足は寝台に向かっている。


「周りには仮初めの夫婦だと悟られたくない。キミが一緒に寝るのは嫌だと言うのなら、私はソファで寝るが」


リオネルが肩越しに振り返った。