皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?

「皇帝陛下のお話、承知いたしました」
「それは了承の意と取ってもいいのだな?」
「はい。五年後の離縁も子どもは作らないというのも、たしかに承りました」


エリーヌが五年間皇妃を全うすることが皇国の安定に繋がるのだとしたら、とても光栄な話である。もともとこの婚姻は、元男爵令嬢であるエリーヌには不相応なものだったのだから。


「ありがとう。心から礼を言う」
「いえっ、陛下、お顔をお上げくださいっ」


リオネルが頭を下げたため、エリーヌが慌てふためく。皇帝に頭を下げさせるなどもってのほかだ。
ゆっくり顔を上げた彼が、不意にエリーヌをじっと見つめた。


「ところでキミとは以前、どこかで会ったことがあるか?」
「それでしたら二カ月ほど前に宮殿で開催されたパーティーで一度」
「いや、それ以前の話だ」


リオネルが首を振りつつ訂正する。


「いいえ、パーティーのときが初めてでした。あのときは髪飾りを拾ってくださりありがとうございました。お礼もしっかり言えず、無礼を働き申し訳ありません」