皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?

「私はそう遠くないうちに皇帝の座を降りるつもりでいる」


リオネルは抑揚をつけず、しかししっかりと断言した。


「そう、なのですか」


思いがけない話のため、エリーヌはたどたどしく返す。

大戦で功績をあげ、諸外国との折衝も巧みなリオネルが今の地位から降りようとしているとは。


「ああ。私が側妃の息子であるのはキミも知っているだろう。本来であれば前皇妃の息子であるアンリに、第一位の皇位継承権がある。しかしまだ成人していないため、私が皇帝の座に就いたのだ」
「……ではアンリ様がご成人されたら、皇帝の座を譲るということでございますか?」
「キミは頭の回転がなかなか速いようだな。その通りだ」


リオネルは目をパチッとまたたかせてから、深く頷いた。

ミッテール皇国では成人は十七歳とされている。現在十二歳のアンリが皇帝になるのは五年後だ。