「とんでもないです、妃殿下。オスカー大公殿下なんて椅子をガタンと鳴らすほどでしたから」
アガットの言葉で、エリーヌはそのときの光景を思い出した。
(あのお方はオスカー大公殿下だったのね)
オスカーは上皇の異母弟である。名前は知っているが、姿を見たのは初めてだった。
上皇のギスランは正妻の息子なのに対し、オスカーは側妃の息子。その年の差は二十歳あり、現在は三十二歳である。
アガットは彼がうっとりしていたと言うが、きっとそれは違う。愕然とした様子だった。
つまり〝皇妃が、あの程度でいいのか〟という落胆に違いない。
しかし今ここで異議を申し立てたところで仕方がない。せっかくアガットが褒めてくれているのだから素直に受け取っておこうと、エリーヌは優しく笑い返した。
「そういえば昨日も、婚礼の儀のあとにオスカー大公殿下が妃殿下にお目通りできないかと侍女長にお願いしてきたそうですよ」
「大公殿下が私に? いったいなにかしら……」
「お美しいお姿を間近でご覧になりたかったのではないでしょうか」
「まさか」
アガットの言葉で、エリーヌはそのときの光景を思い出した。
(あのお方はオスカー大公殿下だったのね)
オスカーは上皇の異母弟である。名前は知っているが、姿を見たのは初めてだった。
上皇のギスランは正妻の息子なのに対し、オスカーは側妃の息子。その年の差は二十歳あり、現在は三十二歳である。
アガットは彼がうっとりしていたと言うが、きっとそれは違う。愕然とした様子だった。
つまり〝皇妃が、あの程度でいいのか〟という落胆に違いない。
しかし今ここで異議を申し立てたところで仕方がない。せっかくアガットが褒めてくれているのだから素直に受け取っておこうと、エリーヌは優しく笑い返した。
「そういえば昨日も、婚礼の儀のあとにオスカー大公殿下が妃殿下にお目通りできないかと侍女長にお願いしてきたそうですよ」
「大公殿下が私に? いったいなにかしら……」
「お美しいお姿を間近でご覧になりたかったのではないでしょうか」
「まさか」



