皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?

アガットによると宮殿で侍女を務めれば経歴に箔がつき、いい縁談が舞い込むのだとか。魔力持ちの場合は、もちろん魔石の相性はあるにせよ。

貴族の中でも身分が低い男爵や子爵の令嬢たちは、こぞって宮殿の侍女に志願するという。


「なんだか恥ずかしいし心配だわ……」


これから初夜を迎えるのかと思うと、婚礼の儀のときの緊張の比ではない。
この一カ月の間、宮殿からヴィルトール家に来た使者に夜伽の心得や手順などの指導はあったが、なにしろ机上の教えのため当然ながら〝実技〟は未知の世界である。


「大丈夫ですわ。こんなにもお美しい妃殿下ですもの、きっと皇帝陛下の心を射止めるに違いありません」


婚礼の儀では、結婚だけでなくエリーヌにも興味を示さなかったリオネルが、いきなり心を動かすだろうか。彼にとって結婚は義務なのだから。
魔力のないエリーヌなら、相性を気にせず初夜を敢行できる。ただそれだけだろう。


「婚礼の儀のときも、大聖堂に集まった方たちはみなうっとりしていましたし」
「いいえ、それは違うと思うの。皇妃には不釣り合いだと思っていらっしゃるわ」