婚礼の儀はつつがなく終わり、エリーヌは瑠璃宮の一室にいた。
政治の要所である宮殿と同じ敷地内にあるが、馬を走らせても五分ほどかかる距離だ。これからそこでエリーヌはリオネルと暮らしていく。
その部屋は皇帝と皇妃の寝所となっており、精緻な彫りが施されたマホガニー製の調度品や、金の装飾がされた花瓶などの陶器はどれも目を瞠る豪華さである。大きな寝台が真ん中に鎮座し、白いシフォン素材の布に緻密な刺繍が縫われた天蓋がやわらかな雰囲気を醸し出す。
今夜はいわずと知れた初夜。エリーヌは侍女たち数人がかりで体や髪を磨き上げられ、上質なシルクのナイトドレスを身に着けていた。
「妃殿下、とってもお美しいですわ」
感嘆のため息を漏らしたのは、以前パーティーに招待されたときに支度を手伝ってくれたアガットである。
大変うれしいことに、彼女がエリーヌの侍女としてこれから仕えるという。ただエリーヌよりもひとつ年下で経験が浅いため、二十代後半の侍女長が指南役としてつくが、日常生活のサポートをしてくれるのは彼女になる。
侍女といえば一般の民から召し抱えられるものだと思っていたが、アガットは男爵家の出身らしい。



