皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?

マーリシアをそっと引きはがし、横になったまま本を開いた。

その童話はミッテール皇国に古くから伝わる話で、敵国同士の王子様とお姫様の悲恋を描いたものである。ふたりは結ばれずに命を落としてしまうが、来世では一緒になろうと交わした約束が果たされたのを予感させるような最後の一文が救いになっている。

マーリシア同様、エリーヌも幼い頃には母親によく読んでもらったものだ。


「おしまい」


最後まで読み終えたとき、マーリシアからは気持ちのよさそうな寝息が聞こえてきた。いつの間にか寝入ってしまったらしい。
今日は朝早くからエリーヌの出発の準備をあれこれ手伝ってくれたため疲れたのだろう。


「マーリシア、ありがとう。おやすみ」


彼女のサラサラな髪を撫で、寝台脇のランプの灯を消した。