結婚を決めてから、瞬く間に一カ月が過ぎた。
その間には宮殿からの使いの者や、婚礼衣装の採寸のために仕立屋が訪れるなど、エリーヌは忙しい日々を送っていた。
いよいよ出発を明日に控えた夜、久しぶりに一緒に寝たいというマーリシアのおねだりで、エリーヌは彼女と一緒に寝台に入った。
幼い頃にはよくふたりでひとつの寝台に寝たものだが、並んで横になるとマーリシアの成長をしみじみと感じる。
「お姉様、これを読んで」
彼女が差し出したのは、昔よく読んであげた童話の本だった。マーリシアお気に入りの一冊だ。
「もう読んでもらうような年ではないでしょう?」
エリーヌが彼女にクスクス笑い返す。マーリシアはもう十歳だ。
「だって、お姉様にはもう読んでもらえなくなってしまうのでしょう? 今夜が最後のチャンスだもの」
大きく丸い目をウルウルとしたマーリシアを見れば、エリーヌもついしんみりしてしまう。



