皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?

彼を見上げて、小首を傾げる。


「私より早くエリーヌの正装を見たから」
「リオネル様ったら。いつ見ようと同じですから」
「夫の私より先とは許せない。あとできつく言って聞かせよう」
「そんなことおっしゃらないで。アンリ様は今日、例の王女様とお会いになるそうで、嬉しくて報告に来ただけですから」


もうエリーヌへの未練はどこにもない。
オスカーの後悔も昇華し、前世のしがらみに囚われている人間は誰ひとりいなくなった。


「そうだな。父親となる男が、そんな些末なことに振り回されている場合ではないな。で、体調はどうだ? 気分が悪くなったら、すぐに私に言うのだぞ? 式典など途中で終わりにしてもいいのだ」


子どもにでも言い聞かせるようにエリーヌの頭に手をのせ、優しく諭す。


「わかりました。でも私たちの結婚一周年をみなさんがお祝いしてくださるのですから、それに応えたいです」
「まったくエリーヌは相変わらずだ」
「相変わらず、どうなのですか?」
「かわいいと言ってる。愛しくて愛しくて堪らない」