皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?

彼からにこやかに挨拶されたマーリシアとアガットも、同様に挨拶を返した。


「こんな早くからどうかされましたか?」
「今日は大事な日なのに忙しい時間に来るなって?」


アンリは腕を組み、唇を尖らせる。


「そうは言っていません。そのままの質問です。せっかく素敵な格好をしているのですから、そんなお顔はされないほうがいいと思います」
「素敵? ほんとに?」
「はい、とっても。いつもより大人っぽく見えます。ね? マーリシア」
「カッコいいです」


目を丸くして何度も確認するアンリは、天真爛漫な普段の彼そのままだけれど。


「それを確認しに来たんだよ。じつは式典のあと、会う約束をしているんだ」
「例の王女様とですか。それは楽しみですね」


先月、アンリは隣国で開かれた舞踏会に招かれ、そこでその国の王女にひと目惚れ。文を飛ばして交流を深め、何度か通っている。
成人を待って結婚する方向で上皇にも許可を得ているそうだ。アンリと同じ氷属性の魔石保持者のため、相性を心配する必要もない。