皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?

「エリーヌ様、ご気分はいかがですか? どこか体調がお悪いところはございませんか?」
「ええ、大丈夫よ。ありがとう」


エリーヌは大事そうにお腹に触れた。
そこにはリオネルとの間に授かった、まだ見ぬ子どもがいる。

その話題はまたたく間に宮殿内に知れ渡り、誰もがみな、その誕生を待ちわびる状態である。

それまであと五カ月。大事をとり、心苦しいが公務も少し控えるようにしていた。


「お姉様、赤ちゃんが産まれたら、私がこのご本を読んで差し上げるわ」
「ええ、そうね。お願いするわ」


マーリシアは件の童話を大切そうに抱え、頼もしそうに提案した。

ミッテール皇国に古くから伝わる悲恋の童話は、ダリルによればミュリエルとマティアスの物語だと言う。悲しんだ当時の領民たちによって語り継がれ、現在の形となったらしい。


「少し冷えますから、体があたたまるお茶でもお淹れしましょうか」
「ええ、お願い」