皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?



時は駆け足で進み、エリーヌがリオネルと結婚して一年が過ぎようとしていた。
ミッテール皇国では皇帝と皇妃の結婚記念日を一年ごとに祝う慣例行事があり、今日はまさにその日である。

エリーヌは朝から身支度に追われ、たった今アガットによるヘアメイクが終わったばかり。生成りのシルクに金糸や銀糸などで刺繍したブロケードドレスへの着替えも済ませ、ようやくひと息ついてソファに腰を下ろす。

リオネルは式典の準備をしている騎士団のところへ顔を出してくると言って、先ほど出かけた。


「お姉様、とっても綺麗!」


はしゃぎながらエリーヌに抱きついたのは、妹のマーリシアである。婚礼の儀には参列できなかったが、昨日ランシヨンから到着した。


「ありがとう、マーリシア」


久しぶりの姉妹の再会を邪魔しないよう、昨夜リオネルは別室で睡眠をとり、エリーヌはマーリシアとふたりきり寝台で寝た。

もう必要のない童話を読み聞かせ、久方ぶりの再会を楽しんでいるところである。