皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?

何百年も前の話を悔いても仕方がない。エリーヌたちが生きているのは、過去ではなく現在なのだから。


「では許してくれると?」


ようやく顔を上げたオスカーは、懇願するようにエリーヌを見つめた。


「許すも許さないも、どうか過去の出来事でご自分を責めるのはもうお止めください。私は今、とても幸せですから。大切なのは今です」


振り返ってばかりで過去に囚われていたら、人は前には進めない。


「……そうですね。妃殿下の言う通りだ」


しばらく考えるように押し黙っていたが、オスカーはそこでようやく表情を和らげた。

椅子に座りなおした彼が、再び語りだす。

オスカーはアンリやリオネルが転生者であることも、早くから気づいていたと言う。エリーヌがミュリエルだと気づいたのは娘だったからだと言うが、おそらく彼は前世での後悔が強く残っていたため、当時の関係者の〝魂〟に敏感になっていたのだろう。