皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?

大人びた態度で闘いを挑んだかと思えば、十二歳相応の子どもじみた駄々を捏ねる。彼の中でノーマンドとアンリが混在し、自分でも整理がつかないのかもしれない。


「このまま尻尾を撒いて逃げるくらいなら……」


アンリは自分の頭上に向け、炎の矢を放った。
高く舞った矢が、今度はアンリめがけて降下していく。


「アンリ様!」
「なにをするつもりだ!」


リオネルはアンリのもとに脱兎のごとく駆け寄りながら、素早く詠唱した。


魔力の突風(マナブラスト)


強力な風が巻き起こり、アンリを狙う矢を吹き飛ばす。ひゅんと音を立て、矢は夜空に弧を描いて飛んでいった。


「なんで邪魔するんだ! もう生きている意味なんてないのにっ」


噛んだ唇に血を滲ませ、握った拳を震わせる。