皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?

「行かせないよ、エリーヌ」
「いやっ、放して!」
「何度言ったらわかってくれるんだ。エリーヌは僕と――」
「嫌です! 放してください!」


力任せにアンリを突き飛ばし、リオネルの元へ駆け寄ろうとしたそのとき。

彼が埋もれたらしき氷が、パラパラと音を立てて崩れ落ちていく。

(……え?)

立ち止まったエリーヌの目の前で、リオネルが立ち上がった。


「あの程度で私を倒せると思っているのか。だとすれば心外だ」


傷などどこにもない。それどころか先ほどよりも気迫が漲り、その風格には畏怖すら感じる。


「アンリ様」


エリーヌはアンリに向きなおり、そっと呼びかけた。


「私は陛下のもとを離れません」
「私もエリーヌを手離すつもりはない」