皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?

「アンリ様! お答えください! 陛下がおっしゃったことは本当なのですか!?」
「……だったらどうだって言うんだっ」


アンリが語気を荒げる。


「どうして! どうしてそのようなことを!?」


宮殿に火を放つなど、もってのほか。尋常でない。


「さっきから言っているじゃないか。エリーヌを手に入れるためだって」
「アンリ、それがどういうことかわかって言っているのか? エリーヌは私の妻だ」
「そんなのわかってるさ。だからこうする以外になかった」
「シャルマン湖の一件も、アンリの自作自演だな」


リオネルに問われ、アンリが不敵な笑みを浮かべる。そこにはエリーヌの知っているアンリの面影はない。人懐こくて陽気な彼が、今はまったくの別人に見えた。


「そこまでわかっているのなら、ここで終わらせるしかないね」


アンリは腕をゆっくり上げ、リオネルを狙うように指を定めた。