皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?

声も掛けられず、息を呑んで見守る。


「エリーヌ、アンリから離れるんだ」


いつになく厳しい声色だった。


「お願いです、陛下。おふたりが傷つけ合うなんて間違っています」
「そうはいかない」
「なぜですか!」


エリーヌには無意味な争いにしか思えないのだ。
それともリオネルも前世の記憶が蘇っているのだろうか。だからこそ、こうしてアンリを追い詰めようとするのか。

しかしリオネルの返答は、エリーヌの予想とはまったくべつのものだった。


「宮殿に炎の矢を放ったのはアンリだ」


――炎の矢。火球の正体は矢だったのか。


「……アンリ様、そうなのですか?」


エリーヌの問いかけにアンリは答えない。ただ唇を噛みしめ、リオネルを険しい表情で見つめていた。