皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?

「エリーヌ、行こう」


先ほど出した炎を消し、アンリが手を引き駆けだす。


「ま、待ってください」


長いドレスを片手で摘まむが、思うように足を運べない。足元を照らしていた炎が消えたせいもあるだろう。

アンリは蹄の音からまるで逃げるよう。
もしかしたらリオネルなのかもしれない。そう思ったとき――。


「エリーヌ!」


リオネルの声がした。蹄の音は、彼の馬だったのだ。


「へ――」
「エリーヌ、早く! ほら!」


〝陛下〟と叫ぼうとしたが、アンリに遮られてしまう。走っているせいで息が弾み、それ以上声を出せない。


「アンリ、止まれ!」