皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?

エリーヌの回復魔法は微力ではあるが、少しでも癒せるのならそのほうがいい。
しかし手をかざして詠唱しようとした瞬間、アンリは体を捻り、エリーヌから腕を遠ざけた。


「やめろ」
「どうしてですか。あのときの怪我のように治癒できるかもしれません」
「魔力を使ったら、リオネルが気づくかもしれない」
「そんなことを言っている場合ではありません! 今はこの怪我をなんとかしないと」


嫌がるアンリを説き伏せ、エリーヌは痛めたと思われる箇所に手をあてた。


聖なる癒し(ホーリーヒーリング)


詠唱するや否や、手からあたたかなものが流れ出すのを感じる。最初に発動したときより、その感覚には手ごたえがあった。
アンリの表情にも変化が現れる。痛みを堪え、眉間に寄っていた皺は完全になくなった。


「いかがですか?」


手を離し、アンリを窺う。


「すごいね、エリーヌ。やっぱりキミは大聖女だ」