皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?

馬から落ちる瞬間、咄嗟にエリーヌを庇ってくれたのだろう。背後にいたエリーヌを守るなど、無理に近い芸当だ。

なにより、魔法を使うほうが確実でもある。

体を起こして無事を確認する。


「……大丈夫、だよ。エリーヌは?」
「私はなんともありません」
「っく……」


しかし、大丈夫と言ったアンリは、起き上がろうとして苦悶の表情を浮かべる。


「やはりどこかに怪我をされているんです」


それほど高くないとはいえ、走っている馬から落ちて平気なはずがない。
アンリは右腕を庇う仕草をした。


「腕を痛めましたか?」
「いや」


怪我を隠そうとするが、否定が否定になっていない。痛みを堪えて顔が引きつっているのだ。


「ちょっとお見せください」