皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?

ふと、あたりが見慣れた景色とは違うと気づいた。


「アンリ様、宮殿に向かうのではないのですか?」


怪我人が出ているのは宮殿のはず。しかしここは敷地内ではない。
それとも、どこかべつの場所でもなにか起こっているのか。


「アンリ様? 聞こえませんか?」


蹄の音でエリーヌの声が聞こえなかったのか、アンリは黙ったままだ。
嫌な胸騒ぎがする。


「アンリ様!」


ジャケットをぐいと掴んで大きな声で呼ぶ。さすがにエリーヌの声に気づいたアンリは、それでも見当違いの方向に進むのを止めない。


「怪我人は宮殿ではないのですか?」
「宮殿にはいかない」
「では、どちらに?」
「誰にも邪魔されない場所」


アンリの返答で自分の置かれた状況を悟った。