皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?

「エリーヌ、急ごう」
「はい」


アンリに続いて廊下を足早に進み階下へ向かう。外へ出るとアンリが用意した馬が一頭いた。

先に馬にまたがったアンリが、エリーヌの手を取り後ろに乗せる。
リオネルのときは前に乗せられたが、アンリはエリーヌより身長が低く視界が塞がれるのを避けるため、後ろにしたのだろう。


「しっかり捕まって」


アンリに従い、彼のジャケットを両手で掴んだ。
心許ないのは、リオネルとの体格差のせいか。揺れる馬体の上から振り落とされないように必死だった。

敷地内の景色が流れるのを横目しながら、先ほどのバルコニーでの出来事を思い返す。

(陛下はなにを言おうとしていたのかしら……)

火球を目撃する直前、リオネルはなにかを言いかけた。


『エリーヌ、キミは』


そのあとにはどんな言葉が続いたのだろう。本人に聞かなければわかりようもない答えを延々と探す。