皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?

「エリーヌは馬に乗れないだろう? 僕なら乗せていけるから。とにかく急ごう。一刻を争う怪我だったら大変だ」


リオネルが自分を必要としている。エリーヌが持っているかもしれない〝魔力〟を求めている。

たとえ完全に目覚めた魔力ではなにしろ、少しでも役に立つと彼が考えたのであれば。


「わかりました。ご一緒します」
「すぐに行こう」
「アガット、出てきますね」


アンリに頷いてから、アガットに伝える。


「エリーヌ様、どうかお気をつけて」


それまで主であるエリーヌを気丈に落ち着かせようとしてきたアガットも、何事かが起こっている現場にエリーヌが向かうとなると心配なのだろう。揺らいだ瞳から不安な気持ちが伝わってくる。


「ええ、そうするわ」


アガットの手を取って握り、軽く抱擁した。