皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?

(えっ、どうしましょう……!)

宮殿にいる人たちは無事か、リオネルは平気なのか。
どうすることもできずに狼狽していると、アガットがやって来た。


「エリーヌ様、中にお入りください」
「でも」
「ここで見ていても仕方がありません」


おそらくリオネルに〝エリーヌを頼む〟と言われたのだろう。

エリーヌは素直に聞き入れ、彼女に従った。
とはいえ、部屋に入っても気が気でなく、じっと座っているどころではない。


「エリーヌ様、少し落ち着いてくださいませ」


アガットは必死に宥め、エリーヌをなんとか座らせようと試みる。お気に入りの紅茶を淹れ、「これでもお飲みください」と勧める。


「まぁ、立派なサクランボですね。陛下がこれを?」
「あ、ええ、そうなの」
「陛下はエリーヌ様を心から大切にされていらっしゃるのですね。これを召し上がってお待ちになりましょう」
「……そうね」