その夜、仕事が立て込んでいるリオネルは、夕食の席に姿を現さなかった。
食事を済ませたエリーヌは、いつになく静かな部屋で立ち尽くす。
これまでひとりきりでも不安にならなかったのに、前世の話を知って以降、どうしようもなく不安になる。
朝、目覚めたときは特にその傾向が強い。夢の影響か、自分がエリーヌとミュリエルのどちらなのかわからなくなるときがある。
(そうだわ。この前、摘んだ花でサシェを作ろうかしら。陛下にもそろそろ替えのものを作って差し上げないと)
心を落ち着かせるには、なにかに打ち込むほうがいい。瑠璃宮の花壇から摘み取り、乾燥させている花がある。
エリーヌは飾り棚の上に広げていた布をテーブルに運んだ。そこには色とりどりの花びらと葉が並んでいる。
椅子に座り、ひとつひとつ手に取って出来を確かめていく。ミッテール皇国は一年を通して空気が乾燥しているため、一週間ほどでカラッと乾いてしまう。どれもちょうどいい乾燥状態だ。
そうして熱中しているとドアが開き、リオネルが帰ってきた。
「お仕事お疲れ様でした」



