皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?

「……あ、いえ、ただちょっと疲れただけです」


慌てて誤魔化したところで、ふとリオネルの指にある小さな切り傷に気づいた。


「陛下、その傷はどうしたのですか?」
「あぁ、これか。書類の整理をしていて少し切っただけだ。大事はない」


リオネルは膝に置いていた手を見つめて微笑む。


「そうなのですね」


そう返しながら、エリーヌはミュリエルに想いを馳せていた。

彼女は、魔力さえなければマティアスと離れ離れにならなかったのにと悔いながら身を投げた。生まれ変わったら、ただマティアスのもとにいたい。魔力などいらないからと。その強い願いが、エリーヌの魔力を封じているのではないか。

そうでなければ、透明なオーラを纏って産まれた意味がない。


「陛下、ちょっとお手をよろしいですか?」
「ん? かまわないが」


躊躇いつつリオネルの手を取る。