翌朝、リオネルを見送ったエリーヌはアガットを連れ、瑠璃宮の庭に向かった。

リオネルには一緒に見にいこうと文にしたため飛ばしたが、まずは自分の目で一度たしかめておきたい。なんといっても、エリーヌが皇妃としてはじめて携わった〝仕事〟なのだから。
ただ種を撒いただけに過ぎず、公務ともかけ離れているが、些細なことでも実行できたのは嬉しい。それは魔力を持たない負い目がほんの少しだけ軽くなるからだろう。


「エリーヌ様、本当に私たちだけで大丈夫でしょうか。陛下がお知りになったら叱られませんか? ニコライ様もいらっしゃいませんし」


先ほどからアガットが不安そうに何度も問いかける。
リオネルには敷地内とはいえ護衛をつけて歩くように言われているため、侍女として言いつけを破って気が気でないのだろう。


「大丈夫よ。外とはいっても瑠璃宮の庭だから」


入口から目と鼻の先だ。ここでの生活に慣れてきたエリーヌにとっては、庭も部屋と同然である。


「エリーヌ様がそうおっしゃるのならいいのですが……」