皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?

「目を覚ました。あとは頼む」
「しょ、承知いたしました!」


ぱぁっと顔を輝かせ、アガットが部屋に飛び込む。ドア越しに「エリーヌ様!」という喜びに満ちた声が聞こえてきた。

笑みを浮かべたリオネルだったが、すぐに表情を引きしめ宮殿に馬を走らせる。執務室にはニコライ以下、魔法騎士団が招集された。


「陛下、妃殿下のご容態は……」
「心配ない。目を覚ましたところだ」


そう報告すると、ニコライは緊張の走っていた表情を少し和らげた。


「なにかわかったことは?」
「今のところはまだなにも」


リオネルは騎士団に宮殿内の調査を指示していた。
いったい誰がアンリに向けて炎の矢を放ったのか。
ニコライの話によると、矢はシャルマン湖から見て北西の方角から飛んできたという。その方角にあるのはここ、宮殿だ。

もちろん断言はできないが、さらに北西となると山にぶつかるため、宮殿から放たれたと考えるのが妥当だろう。