皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?

「無事だ。大した怪我ではない」
「……あんなに血を流していたのに?」


やはりアンリは深手を負っていたようだ。


「キミの祈りが通じたのだろう。案ずるな。それより……」


リオネルがエリーヌを抱き寄せる。


「エリーヌが無事でよかった」


心からそう思う。アンリよりエリーヌの無事を喜ぶ自分に戸惑いを覚えながら。
義理とはいえ弟であり、次期皇帝の身の安全より、五年後離縁する予定の妻の身を案じるなど――。


「陛下……ご心配をおかけして申し訳ありません」


謝りながらエリーヌは体を強張らせていた。
仮面夫婦を演じろと言った夫から突然抱擁され、困惑しているのが肌でわかる。ここは仲睦まじい夫婦だと見せる必要のない場所だ。


「このまま目覚めなかったらどうしようかと不安だった」