皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?

彼の意見はもっともだった。
ランシヨンのヴィルトール邸の花壇とは規模が違う。ニコライに『ほかの者の手も借りましょう』と提案されたが、公務の邪魔になるだろうと断ったのはエリーヌだった。


「そうですね。ほかの場所もお願いできますか?」
「もちろんです」


ニコライは喜々として手を掲げた。
すべての花壇の土を耕し、肥料をまき終えるまであっという間だ。


「ここからは妃殿下の出番です。種の配置など、お考えもあるでしょうから。我々にご指示ください」
「ありがとうございます。ちょっとお待ちくださいね」


小袋に分けられた種を一袋ずつ手で包み込む。

〝綺麗な花を咲かせてね〟

そう念じてからアガットとニコライに手渡していく。
ランシヨンで種をまくときには、決まってそうして念を込めていたのだ。不思議と花の生育がいい。
そうして手分けして種をまいていたエリーヌだったが、馬の蹄の音がしたため振り返った。


「妃殿下、ようやくお会いできました」