皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?

先ほど馬に一緒に乗ったときのことを思い返して頬が緩む。


「なにか良きことがあったようだ」
「はい。乗馬は苦手だったのですが、陛下が一緒に乗せてくださって、とっても楽しかったんです」
「陛下がエリーヌと一緒に?」


ダリルが目を見開く。よほど驚いているようだ。


「冷酷で有名な陛下がエリーヌ殿には優しいというのだから」


それは聞き捨てならない。エリーヌは遠慮がちに反論する。


「ダリル様、陛下は本当にお優しいんです。どうして冷酷と言われるのか、私にはわかりません」
「ほうほう、そうですな、そうですな」
「ダリル様、本当にわかっていらっしゃいますか?」


ニコニコというよりはニヤニヤ顔のダリルに釘を刺すが、全然効いていない様子なのがもどかしい。

(もうっ、ダリル様もアンリ様も、ふたり揃って私や陛下をからかうんだから。……あら? この奥にも書庫があるのかしら……)

珍しく頬を膨らませるエリーヌは、ダリルから視線を外した先に入口とはべつのドアを見つけた。