皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?

宮殿に到着し、乗せてもらった礼を告げる。
エリーヌは辞退したが、リオネルは本が重いだろうとダリルがいる魔石研究所まで送り届けてくれた。


「これはこれは皇帝陛下。妃殿下もご一緒でございましたか」


姿を現したふたりを見てダリルがルーペを外して立ち上がる。驚きと喜びとが混ざり合った顔だ。

しかし平常なのはダリルだけ。研究所がにわかに緊張感に包まれ、誰も彼も直立不動になる。エリーヌはともかく、皇帝が現れれば無理もない。


「ダリル様、こんにちは」


そんな空気を払拭するかのようにエリーヌの鈴のような声が響くと、所員たちの表情は一様に和らぎ、穏やかなものとなる。


「エリーヌが本をすべて読み終えたと言うのでこちらへ」


リオネルは背負っていた本の包みを肩から下ろした。

「ほうほう、さようでございますか。いやはや、おふたりがご一緒の姿をこうして間近で見られるのはうれしいものですな。仲が良くてなによりなにより」