皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?

「エリーヌを妃に選んだ自分が誇らしいよ」
「もったいないお言葉。ありがとうございます」
「こちらこそ礼を言う。ありがとう」


リオネルほどの人物に感謝されてうれしくなると同時に、不意に寂しさが胸を過った。

五年後、エリーヌはリオネルの元を去らねばならない。お飾りの妃としての役目を終え、リオネルの妻ではなくなる。
再婚するならば、それなりの家柄の者を探すと言ってくれているが、リオネル以外の人と結婚する未来が見えない。


「ところでエリーヌ、キミは寝台と同じ匂いがするな」


髪に彼の鼻先を感じてドキッとする。


「サシェをドレスの中に忍ばせているからでしょうか」
「そうか。とても安らぐいい香りだ」
「よろしかったら陛下もお持ちになりますか?」


エリーヌは、小さな香袋ひとつで、公務で忙しいリオネルを癒せるのならと考えた。

しかしすぐに出過ぎた真似だったと後悔する。真面目な公務の場に癒しは必要ないだろう。むしろ緊張を削ぐものになりかねない。