皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?

そうすればエリーヌが受け取ったのではなく、瑠璃宮が受け取ったと周囲もみなすだろう。

花瓶を抱えるアガットとともに部屋を出たエリーヌは、その足で向かった瑠璃宮の正面玄関で待つリオネルの姿を見て息を飲んだ。――いや、正確にはリオネルが〝連れているもの〟を見て、である。
逞しくも美しい筋肉をつけた馬がいたのだ。

月の色のような毛は金属的な光沢を帯び、金色に見える。神々しい姿は皇帝リオネルの馬に相応しく、彼をいっそう威風堂々とさせる。
馬の頬を撫でるリオネルの横顔が慈しみ深く尊い。


「陛下、お待たせいたしました」


あたりに馬車の用意はなく、リオネルの馬が一頭いるだけだ。


「とても綺麗な馬ですね」
「よかったな、エリーヌに褒められたぞ」


リオネルが馬に伝える目は優しく、大切にしているのがよくわかる。
リオネルに返事をするように、彼はフゥと鼻から息を吐き出した。


「エリーヌです。どうぞよろしくね」


そっと手を伸ばすと、馬は鼻先を押しつけた。