皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?

「ア、アンリ様、陛下をからかうのはお止めいただけないでしょうか」


取り澄まして彼に話の矛先を向ける。


「からかってないよ。事実を言ったまでだし。僕にも大公にも嫉妬したんだよ」


もしもそう見えたのだとしたら、リオネルは円満な夫婦を演じただけだろう。彼にはそう見せる必要があるから。


「信じてないって顔だ。ま、べつにいいけど。さて、そろそろ帰らないとプロフェッサーに叱られるな。じゃあ、またくるね、エリーヌ」


アンリはピョンと飛ぶように立ち上がり、手を振りながら軽い足取りで部屋を出ていった。


「このお花、どういたしましょうか」


アガットが心配そうに花瓶とエリーヌを交互に見つめる。


「そうね……。花に罪はないから、べつのお部屋に移しましょうか」
「では、朝食の間はいかがですか」
「いいわね」