皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?

リオネルの眉がピクリと動く。義弟とはいえ、皇帝に向かってそのような言いがかりはさすがにまずいだろう。


「アンリ様! 決してそのようなことはございませんので!」


エリーヌは大慌てで否定した。
リオネルがお飾りの妃に嫉妬する理由はなにひとつない。

それなのにアンリはどこ吹く風。その鈍感力もまた、将来の皇帝陛下たるべき器なのかもしれない。


「とにかく、ちょっと休憩しに来ただけ。さぼってなんかないよ」
「陛下、アンリ様には私からもお勉強はしっかりするようお願いしますので」


アンリは五年後、この国を背負って立つ人間。甘やかし過ぎて、ミッテール皇国が崩壊の危機にでも陥ったら大変だ。

リオネルはエリーヌの仲裁の言葉に軽く頷いた。


「ところであれは?」


リオネルの目線を追いかけると、そこには大ぶりの花瓶に生けられた花がある。