皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?

「そうそう。行ったことはある?」
「ございません。皇都で訪れたことがあるのは宮殿がある敷地内だけなので」


それでも十分広いため息苦しさは感じないが。


「じゃあ、僕に案内させてよ」
「それは――」
「プロフェッサーの許可はしっかり取るから」


懸念を感じ取りアンリが先回りしたため、エリーヌは言葉を飲み込む。瞬時に状況判断をして正解を導き出す力は、将来の皇帝として重要な資質だろう。


「では、陛下のお許しが出たらでよろしいでしょうか」
「もちろん。お忍びで皇妃を連れ出すわけにはいかないからね」


物わかりもいい。アンリはウインクを投げてよこした。

それからどれくらい経った頃だろうか。アガットが二杯目の紅茶をエリーヌとアンリに淹れたときだった。
ノックの音に対応したアガットが素っ頓狂な声を上げる。


「こ、これは皇帝陛下!」