皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?

「ではすぐにお帰りにならなくてはなりませんね」
「そんな意地悪は言わないでよ。僕がいたら邪魔?」
「いいえ、アンリ様とのお話はとても楽しいですから」
「じゃあ今日はなんの話をしようかな」


エリーヌの返答に気をよくしたアンリは、アガットが淹れた紅茶をニコニコ顔で飲みながら剣稽古の話をはじめた。


「ところでエリーヌは、いつもここに閉じこもりきりで息が詰まらない?」
「いいえ、閉じこもりきりというわけではございませんから。ダリル様に本を借りるために宮殿にも出かけておりますし」
「だけど、そことの往復だけだよね? せっかく皇都に来たのにそれだけじゃもったいない」


たしかに宮殿と瑠璃宮しか行き来はしていない。それでも十分だと思ってしまうのは、魔石の本を夢中で読み漁っているせいか。


「宮殿の近くに景色の綺麗な湖があるから、今度一緒に行こうよ」
「シャルマン湖でしょうか」


ミッテール皇国には湖が三つあるが、中でも景観の素晴らしさを耳にすることが多い。とりわけ太陽の光を浴びてアイスブルーに光る湖面が美しいのだとか。