皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?

勉強を抜け出す口実にしたのではないかとエリーヌは思っているが、皇帝陛下の弟がわざわざ訪ねてくれたのは素直にうれしかった。

アンリはエリーヌが手にしていた魔石関連の本に興味を示し、読んでほしいとねだった。勉強で目が疲れたたため自分では読めないが、どうしても内容は気になると。

マーリシアと年齢が近い彼に甘えられ、ねだられるまま朗読すると、アンリは興味津々に聞き入った。

それからというもの、日を置かずにこうしてここへやって来るようになった。


「それでエリーヌは今日も魔石の本?」
「はい。ダリル様にお借りした本は、たった今すべて読み終わりました」
「エリーヌは本を読むのが速いね」


アンリが「へえ」と感心する。


「時間だけはたくさんありますので」
「羨ましいよ。僕なんて一分刻みでスケジュールが決められて窮屈ったらありゃしない」


両手を天に向けて肩を竦める。人々から羨まれる立場には違いないが、その地位にいるのにも悩みは大いにあるだろう。むしろ庶民よりもずっと重くて深いものが。