皇帝陛下がやっぱり離縁したくないと言ってくるのですが、お飾り妃の私が伝説の聖女の生まれ変わりだからですか?

前皇妃、つまりアンリの母親も生前はそこで暮らし、前側妃は瑠璃宮でリオネルと一緒だった。


「プロフェッサーにはきちんとご報告を?」
「う、うん、言ったさ」


目を泳がせる仕草は、嘘だと言っているも同然。アンリは居心地が悪そうにお尻をもぞもぞとさせた。きっと正直な性格で隠し通すのができない性質なのだろう。


「また黙っていらしたんですね?」


そんな様子がかわいくて、エリーヌはついクスッと笑みを漏らす。

現在アンリは帝王学を学んでいる最中である。座学はもちろん魔法の実技や剣術など、連日スケジュールがびっしり詰まっているという。


「エリーヌの朗読が好きなんだから仕方ないよ。それに朗読を聞くのだって立派な勉強だよね」


アンリが初めてここへやって来たのは、結婚から二日経った午後のことだった。

婚礼の儀の前に顔合わせはしたが、『僕のお義姉様になった人に挨拶をしてこなければならない』とプロフェッサーに大真面目にお願いしたのだとか。