その執着は、花をも酔わす 〜別れた御曹司に迫られて〜



パーティー会場が騒ぎになってしまい、なんとなく気まずくなってしまった私たちは船のデッキにいた。
先ほどまでの騒がしさが嘘のようで、波の音がときどき「トプン」と聞こえる。

「新聞に載るかもな、『お家騒動』なんて見出しで」
彼が面倒そうに言う。手にはシャンパングラスを持っている。
「でも頑張ったな、花音」
彼は私の叩かれた頬を指の背で撫でる。
「まだドキドキしていて、現実味もないけど」

彼に笑みを向けた瞬間、潮風が通り抜ける。
心の傷が癒えたわけではないけど、少しだけ軽くなった気がする。

「あなたに一つ、聞きたかったの」
「ん?」
「私が七年間勉強したことを知っていて私を秘書にしたの?」

私はこの七年間、パーティーなどのマナーだけでなくビジネスマナーも必死に勉強して、語学や秘書の資格もいくつか取っていた。
「もちろん君の仕事ぶりの調査やヒアリングは行って、君のことは調べた。たしかにもう〝あの頃の君〟ではなかった」
彼は笑う。
「潰れそうな会社で燻らせておくわけにはいかないと思ったし、悪い虫が付きかけていたみたいだな」
「……」
『なんか俺、嫉妬されてるのかなって感じだったし』
海棠さん、正解……。

「本当ははじめから自信があったんだよな? 社長秘書になることに」
「え?」