その執着は、花をも酔わす 〜別れた御曹司に迫られて〜

「成貴が社長になってから、碇ビールは業績がずっと伸び続けている。彼を解任すれば社内外から反発が出るだろう。困るのは我々の方だ」

お父様が成貴さんと私を見る。

「成貴、それに花音さん、すまなかった。こうなってしまったのは、彼女の横暴な行動から今まで目を背けていた私の責任だ」

そう言って、彼は立場のある人間だというのに深々と頭を下げた。

「軽々しく〝家柄が大切でない〟とは言えないが、家柄だけでどうにかなるような時代でもない。君たちは、そういう時代に合った生き方をすれば良い」
「父さん……」
「花音さん。彼女がなんと言おうと、私はあなたを迎えたい。〝碇の嫁〟などではなく、花音さんという一人の人間として」
お父様の言葉に、私と成貴さんは実感の無い喜びで顔を見合わせた。

「勝手なことばかり……言わないでちょうだい」
お母様はそう言うと、会場を出て行ってしまった。

「控え室にでも籠っているだろうから、後で私から言って聞かせるよ。時間はかかるだろうが、彼女も理解しなくてはいけない」
お父様は「やれやれ」と、またため息をついた。

「この家も変わる時期だ」