〇第4話のつづき・学校の教室
 美和「!!」
 美和、机に座って驚いた表情でタブレットの画面を見つめている。

 ここのところずっと下降していた小説のランキングが上がっている。
 美和「やった!」

〇学校・昼休み・屋上
 お昼を食べる美和と朝陽。

 美和「見て! ランキングが上がったの!」
   タブレットを朝陽に見せる。
 朝陽、パンをかじりながら「お、すげー」
 美和「遊園地デートのエピソードを更新したの」

 美和、上機嫌でお弁当を食べている途中で、朝陽がタブレット片手に小説を読んでいることに気づく。
 美和(しまった! 最後まで読まれたらマズい!)

 美和「返して」
   タブレットに手を伸ばす。

 朝陽「あ、誤字みっけ」
 美和「え! どこ?」
 朝陽「ここ。『そして』が『そそて』になってる」
   画面を指さす。

 美和「うわー! ありがとう、助かる」
   すぐに修正する。

 美和「見直したはずなのに誤字があるのなんでだろ」
 朝陽「そんなもんだよ。兄貴だって誤字いっぱいあるし」

 美和、太一が『朝陽、手伝って』と言っていたことを思い出す。

 美和「もしかして、いつも誤字チェック手伝ってるの?」
 朝陽「そう」
 美和「いいなー!」
 朝陽「いいもんか。すげーめんどくせえ」

 美和(草野メロディ先生の新作を一番に読めるってことでしょう? 素敵!)

 朝陽「それよかさ、この二人は観覧車でキスしたんだね」
 美和「!!」
   顔真っ赤。
 美和(やだ、読まれてた!)

 小説の内容は、くまがテーマの遊園地にデートに来た主人公と彼が観覧車に乗る。
 「高くて怖い」と言う主人公に彼氏が「目を閉じていればいいよ」と言ってキスする流れ。

 朝陽「まんま俺らじゃん」
 美和「えっと……」(恥ずかしいっ!)
 朝陽「いいヒントになった?」
 美和「……うん。ありがとう」

〇学校・昼休み・教室へ向かう途中の廊下 
 朝陽と美和、小説の内容について話しながら教室へ向かって歩いている。

 美和(ん? なんか注目を集めてる……?)
   生徒たちが美和と朝陽をチラチラ見ている気がする。

 朝陽「……」
   さりげなく美和の肩をに腕を回す。
 朝陽、昨夜太一に『おまえがちゃんと守ってやれ』と言われたことを思い返している。

 周囲のヒソヒソ声「あの二人付き合ってるんだって」
         「意外とお似合いかも」
         「なんかすごく幼稚な嫌がらせされたらしいよ」
         「やったヤツら、ダサ」

 美和、自分たちが悪く言われているわけではないと気づいてホッとする。
 美和の友人、志保が駆け寄ってくる。

 志保「美和ちゃん!」
   美和の手をぎゅっと握る。

 志保「大事なもの壊されたんだってね。大丈夫?」
 美和「心配してくれてありがと。大丈夫だよ」

 志保、朝陽を怖い顔で見つめる。
 志保「美和ちゃんのこと、泣かしたりしないでね!」
 朝陽「わかってる」(ここにもチワワが……)

 志保「メールするね」

 美和、立ち去る志保の背中を見送る。
 美和(志保ちゃんには事情を説明しておかないと)

〇教室・昼休み
 美和に幼稚な嫌がらせをしたと噂され白い目で見られて立場のない女子AB。
 美和と朝陽が教室に戻ってくる。
 二人に駆け寄る女子AB。

 女子AB「昨日はごめんなさい!」
     頭を下げる。
 女子A「キーホルダーを壊して捨てたのうちらです」
 女子B「やきもちっていうか、どうしてって気持ちが強くて…ほんとごめんなさい」

 美和、表情を引き締める。
 美和「謝っただけで終わりだと思わないで」

 美和(前のわたしだったら「もういいよ。気にしてないから」ってヘラヘラ笑って許したはず。でもそれじゃダメ)

 美和「キーホルダーのお金は弁償してほしい」
 女子AB「!!」
 女子A「もちろんそうする」
 女子B「ちゃんと弁償します」

 女子AB、財布からお金を取り出して美和に渡す。

 朝陽「これでもうお互いわだかまり無しな」
 美和、女子AB、頷きあう。

 女子A「ねえ、朝陽は牧本さんのこと好きってことでいいんだよね?」
    おそるおそる質問する。

 朝陽「うん。好きだよ」

 4人のやり取りを見守っていた教室中から「ヒュー」と囃すような声がする。
 チャイムが鳴って全員席に着く。

 美和、朝陽の『好きだよ』が耳にこだましてドキドキが止まらない。