○電車の車内
 ドア付近に立っている美和と朝陽。

 美和「お兄さんと二人暮らし?」
 朝陽「そう。親は海外赴任中。兄貴はいつも家で仕事してる」
 美和(さっきはびっくりした。いきなり家に来るかなんて!)

〇回想 第3話最後のシーン
 朝陽「これから俺ん()来ない?」
 美和「えっ!」
   ドキンとする。
 
 朝陽「美和のこと、兄貴に紹介したい」
 美和「お兄さん!?」

 美和(なんだ……誰もいないのかと思った)
 
 美和、ちょっぴり残念に思っている自分に気づいて、なにを考えているんだと思う。
 くまーランドの観覧車内でキスされそうになったことを思い出して、その記憶を振り払う。

(回想終了)
 
〇駅を出て住宅街
 並んで歩く二人。
 
 美和「わたしは両親とお姉ちゃんの4人暮らしだよ」
   家族の顔を思い浮かべながら。
 
 朝陽「ウェブ小説書いてること、家族は知ってんの?」
 美和「言えるわけないじゃん! 恥ずかしいもん」
 朝陽「ハハッ」

○朝陽の自宅・玄関
 朝陽、鍵を開けて中に入る。

 美和「おじゃまします」
   朝陽に続いて入り、家に上がる。

 朝陽「兄貴が仕事中か見てくるから、待ってて」
   美和を置いて階段を上がっていく。

 兄の太一、1階の洗面所からふらりと現れる。
 美和(ん?)
 太一「朝陽、手伝ってー」
   メガネを外しているせいで朝陽と勘違いして美和に抱き着く。

 美和「え!?」驚いて固まる。
 朝陽、慌てて階段を下りてきて美和に抱き着く太一を引き離す。
 朝陽「なにやってんだよ。離れろ!」

〇朝陽の自宅・リビング
 ダイニングテーブルに向い合せに座る美和と太一。朝陽は美和の隣に座っている。

 メガネをかけた太一「ごめんね。朝陽と間違えたんだよ」
 朝陽「間違えるか普通?」
 太一「だってブレザー着てたし? でも朝陽よりちっちゃくて柔らかくていい匂いがするからおかしいなーとは思った」
 朝陽「変態か」
 太一「朝陽が彼女をうちに連れてくるだなんて初めてだよね?」
   美和に向かってにんまり笑う。
 
 美和「はじめまして、牧本美和です。朝陽くんとは同級生です」
   ぺこりと頭を下げる。
 
 朝陽「日下部ジュリエッタってペンネームでウェブ小説書いてるんだって」
 美和「!! ちょっと! それ言わないでよ!」
   ポカポカ朝陽を叩く。

 朝陽・太一(チワワみたいでかわいい)

 朝陽「俺も小説を書いてるよ。草野メロディっていう名義でね」
   にっこり笑う。

 美和「えぇぇっ!?」
   ひどく驚いて思わず立ち上がる。

 美和「草野メロディ先生?」
 太一「はい」にっこり。
 美和「本物ですか?」
 太一「はい」にっこり。

 美和、バッグから草野メロディの文庫を取り出す。
 美和「サインくださいっ!」

 太一、サインを書いて手渡す。
 太一「草野メロディが男だってことはナイショね」

 美和、コクコク頷く。
 美和(うわぁっ、サイン本のサインと一緒だ。本物だぁ!)

 美和「草野先生の、キュンキュンして最後は絶対ハッピーエンドのお話が大好きです!」
 美和、前のめりに熱く語る。

 太一「ありがと」
 朝陽「いまウェブ小説がスランプなんだってさ」
 太一「ふーん?」
   意味ありげな視線を朝陽に向ける。

〇回想
 ここまでの経緯を太一に説明。
 第1話の美和が困っているシーン、恋人ごっこをしていること、第3話の「ざまあ」の気づき。

(回想終了)

〇再びリビング
 太一「なるほどね」
   スッとまじめな表情になる。
 
 太一「ざまあっていうのは刑罰だと考えればいいんだよ」
 
 太一「主人公がなんでもすぐ許して悪人が罰を受けない展開は読者がモヤッとするし」
   ヒロインがなんでも許してしまう様子を想像。

 太一「かといってあまりに重い罰だと、残忍で凄惨になってしまう」
   悪口を言っただけで命が代償になる様子を想像。

 太一「だから読者が一番しっくりくる罰を悪役に与えないといけない。しかもそれは必ずしもヒロイン自身が手を下さなくてもいいよね」

 美和、太一の説明をメモを取りながら熱心に聞く。

〇朝陽の家・玄関
 美和、帰るところ。

 美和「おじゃましました。今日は本当にありがとうございました」ぺこり。
 太一「またおいで」にっこり。

 朝陽「俺、駅まで送ってくるから」
   美和と一緒に出ていく。

 太一「ふーん?」おもしろそうに笑う。

〇美和の自宅・風呂場・夜
 湯船につかる美和。

 美和「朝陽くんのお兄さんが草野メロディ先生だったなんて……」
   (なんだかまだドキドキしてる)

 美和「夢じゃないよね?」
   ブクブク顔を半分お湯に沈める。

〇美和の部屋・就寝前
 美和、パジャマで机に向かってタブレットに小説を書く。
 美和「よし、完成! 更新!」

 スマホに朝陽から「おやすみ」のスタンプ。
 美和も「おやすみ」と返す。

〇翌日・学校の教室
 美和「!!」
 美和、机に座って驚いた表情でタブレットの画面を見つめている。