〇学校・教室(1話のつづき)
 美和が見上げると、朝陽が怖い顔で美和を見下ろしていた。

 美和(なんなの? いきなり怒ってる!?)
 朝陽「スマホ」
 美和「え?」
 朝陽「スマホ貸して」

 美和、朝陽の勢いに押されてスマホを渡す。

 朝陽、美和と自分のスマホをいじりながら。
 朝陽「昨日連絡先交換し忘れてた」
 美和「え?」

 朝陽、スマホを美和に返す。
 朝陽「これでオッケー」
 美和「え?」

 朝陽、美和の頭にポンと手を置く。
 朝陽「昼、屋上ね」
 美和「えっ!」
 
 朝陽、プッと笑う。
 朝陽「さっきから『え』しか言ってねーじゃん」

 朝陽、友人たちの輪に戻っていく。
 美和、頬を赤くしながら朝陽の背中を見つめる。

 美和、女子ABがおもしろくなさそうな顔で見ていることに気付いていない。

〇学校・屋上・昼休み
 晴れ渡る空。
 屋上のドアを開けて様子をうかがう美和。手には弁当袋をさげている。

 美和(朝の「昼、屋上」ってお弁当を一緒に食べようってことでいいんだよね?)
 
 美和がキョロキョロしていると、フェンスを背に座っている朝陽が手を振る。
 朝陽「こっち」

 美和、緊張しながら朝陽の隣に座り膝の上でお弁当箱を開ける。

 美和「藤島くんはパンなんだね」
 朝陽「うん。毎日購買」
   メロンパンと紙パックのコーヒー牛乳。

 食べ始める二人。

 朝陽「いつも弁当食べながら本読んでるよね?」
 美和「うん…」(知ってたんだ)

〇回想・教室・昼休み
 美和(1年のころは志保ちゃんといつも一緒だったけど)

 美和と志保がふたりで楽しそうにお弁当を食べる様子。
 
 美和(今は、ぼっちでかわいそうな人だって思われないように本を読みながらお弁当を食べている)

 机でひとり、本を片手にお弁当を食べている様子。

 美和(そうやって自分から壁を作ってしまったから、なおさら同じクラスで友達ができないんだけど)

 顔を上気させながらわくわく読書している美和。

 美和(仕方ない。だって草野メロディ先生の本がおもしろすぎるんだもの!)

(回想終了)

〇再び屋上。

 先に食べ終え屋上を去ろうとしている男子AB。
 
 男子A「あいつら付き合ってんの?」
 男子B「知らね」

 男子AB、笑いながら去っていく。
 
 美和「なんか、恥ずかしいね」
 朝陽「ベタな恋人っぽいことたくさんしておこうかなって」
 美和「青空、屋上、制服、お弁当って、いかにもアオハルだよね」
 朝陽「いいアイデア浮かんだ?」

 ニッと笑う朝陽にドキッとする美和。

〇学校の前のバス停(下校)
 ベンチに座る美和と朝陽。
 第1話同様、緊張してカチカチになっている美和とリラックスした様子でスマホをいじる朝陽。

 朝陽「週末どっか行く?」
 美和「明日?」(予定はないけど……)
 
 朝陽、肩を寄せてスマホの画面を見せる。
 観覧車が映る遊園地・くまーランドのホームページ。
 
 朝陽「ここ行く?」

 美和(遊園地!? デートの定番だ!)
 美和「行く! 行きたい!」

 美和がスマホから顔を上げると、すぐ近くに朝陽の顔がある。

 美和(!!)ドキッとする。
 朝陽、ぷはっと笑う。

 朝陽「じゃあきまり」

 バスが来る。
 窓越しに手を振り合うふたり。

〇翌日・待ち合わせ場所・クマーランドのある駅前

 朝陽の姿を見つけて駆け寄る美和。

 美和「おまたせ!」
 朝陽「おはよ」

 朝陽、美和のスカート風ショートパンツ姿をじっと見る。

 美和(やっぱりヘンかな……)

○美和、昨夜の回想 自宅の美和の部屋
 美和が何を着ていけばいいか悩んで頭を抱えていたら、姉が遊園地デートにおすすめなコーデを張り切って選んでくれた。

 姉の佳奈(かな)「いつの間に彼氏作ったの!?」
 美和「彼氏とか、そんなんじゃないから!」
 佳奈「ふたりっきりで遊園地行くくせに? やるじゃん」
 美和「だから、違うから!」
 佳奈「はいはい、そうゆーことにしといてあげる」
   楽しそうに服を選びながら。

(回想終了)

〇駅前
 朝陽「かわいいね」
   にっこり笑う。

 美和(なんかすごくデートっぽい!)
   「藤島くんもカッコいいよ」
 朝陽「朝陽」
 美和「え?」
 朝陽「朝陽って呼んで。俺も美和って呼ぶから」
 美和「!!」
   (わたしの名前、知ってるんだ!)

 美和、照れながら「あ、朝陽……くん」

 朝陽、にっと笑って頭ぽん。
 美和、ドキンとする。
 
 朝陽「いこーぜ」
   当たり前のように美和の手を握って歩き出す。

 美和(慣れてるなぁ……)
   歩きながら握られている手元に視線を落とす。
   (大きくてゴツゴツした手。わたしばっかりドキドキしてる)

〇くまーランド内
 くま耳カチューシャを買う二人。
 頭につけて笑いあう。

 朝陽「いいね。かわいい」
 美和「朝陽くんもよく似合ってるよ」

 アトラクションを楽しむ二人。

 朝陽、ジュースを2つ持ってベンチで待つ美和のもとに行こうとしている。
 途中で女の子二人組から声をかけられる。

 女の子たち「ひとりですか?」「私たちと一緒に回りませんか?」

 美和、その様子をベンチから眺めている。(モテるなぁ……)

 朝陽「ごめん、彼女と来てるから」
   女の子たちから離れて美和に駆け寄る。

 朝陽「おまたせ」
   美和の隣に腰掛ける。

 美和「朝陽くんはほんとモテるね」
 朝陽「ジュースふたつ持ってんのに、ひとりですかはないよな」
   苦笑しながら美和にジュースを渡す。
 美和「ありがとう」
 
 美和と朝陽、ジュースを飲みながら。
 朝陽「俺って女の子たちが一目ぼれする顔立ちなんだよな」
 美和「うん、知ってる」
   苦笑。
 美和「黙ってても女の子たちが寄ってくるタイプだよね」
 朝陽「でもさ、中身がどんなヤツか知りもしないでよく声かけてくるよな」
 美和「それだけカッコいいってことじゃない?」

 朝陽、憮然とする。
 朝陽「なんか、ブランドもののバッグと同じ感覚なのかって思う。付き合ってもすぐフラれるし」
 美和「え! そうなの?」
 朝陽「そうだよ。思っていたのと違ってた。つまんないってさ」
 美和「わたし、朝陽くんと一緒にいるの楽しいよ」

 朝陽、ほのかに赤面する。
 朝陽「次、観覧車行こう」
   立ち上がって美和の手を引く。
 
〇くまーランド内・観覧車の中
 向い合せに座る二人。
 美和、姉へのお土産を買った時にいっしょに買っていた、くまのキーホルダーを見せる。
 
 美和「色違いで買ったの。一個あげる」
   青いくまを朝陽に渡す。
 朝陽「サンキュ」

 美和、外を見ながら「けっこう高いね。ちょっと怖いかも」
 朝陽「じゃあ目をつむっておけば?」

 言われた通り目をつむる美和だったが、首をかしげる。
 美和(でもせっかくだから景色を見ないと損だよね?)

 美和、目を開けるといつの間にか隣に座った朝陽の顔がすぐ目の前に。
 朝陽、美和にあごクイ。
 
 美和「~~~~っ!!」