【短】八橋くん、私にかまわないで…!



 あぁ、八橋くんだって思ってたのに。

 一瞬で友哉くんだって、心がふるえてしまった。


 私はうつむいて、うそをつく。




「っ、学校に行きたい…友哉くんのこと許してない、友哉くんに会いたくなかった…!」




 ふるえて、裏返って、これじゃあきんちょうしてるのがバレバレだ。

 私は目をつむって、ぎゅっとドアノブを握った。




「…そ、っか」




 その静かな声に、傷ついた心を感じたから。

 傷つけてしまったと、焦燥が押し寄せたから。

 私は、ばっとフードを外して、友哉くんの目を見た。




「ぜんぶ、うそ、だよ…っ」


「…え?」




 ふるえる右手をおなかのまえで、ぎゅっと握って、こわばった顔で、目を丸くした友哉くんと見つめ合う。

 家族以外でちゃんと人の目を見るなんて、いつぶりだろう。

 友哉くんがまばたきをするのも、ゆっくりに見えた。