【短】八橋くん、私にかまわないで…!



「…友哉くん、まだ待ってたからはなしてくるっ」


「え?」




 私は着ていたパーカーのフードをかぶりながら、玄関に向かって走って行く。

 ドアノブに手を伸ばすところまではすんなりと体が動いたけど、手がふるえてしまって、力をこめられない。

 だって、会ってなにをはなしたらいいの?


 私はもう昔の私じゃないのに、“学校に来て”っていう友哉くんの望みだって叶えられないのに。

 ただあやまることしかできない。




 “どんなうそをついてもいい、エイプリルフールに”




 うそ…うそだったら、はなせるかな。


 私はごくりとつばを飲んで、ふるえる手に右手をかさね、ぐっとドアノブを押しこんだ。




「あ…つぐみちゃんっ」