「稀月くん、瑠璃ちゃん、このニュース見た?」
宝生家に来て、一ヶ月後の朝。
朝ごはんを食べていると、大上さんが、私と稀月くんにスマホでニュースを見せてきた。
そこに載っていたのは、昨夜、九州で起きたという事件。
真夜中に十代の少女が刃物を持った男に襲われて、重傷を負ったというものだ。
少女は銀のナイフで心臓のあたりを狙われたが、犯行現場の近くを偶然通りかかった人が通報をしてくれて、一命を取り留めたらしい。
大上さんに魅せられたネットニュースでは、犯人の捕まっていない通り魔事件として扱われていたけれど、凶器が銀のナイフだということを知って、ピンとくる。
月齢的に満月が見られるのは今夜。
だけど昨夜も、ほぼ満月といっても違わないくらいの真ん丸で綺麗な月が出ていた。
「この事件ってもしかして……」
「NWIの九州支部はRed Witchと関係があるとみて捜査を進めてるらしい」
大上さんが、私の目を見てうなずく。
「たぶん、昨日の事件に関わっているのは、手っ取り早く稼ぎたい若い使い魔。最近はRed Witchの中でも、満月の夜の儀式を忠実に行うグループとそこまで形式にこだわらない若いグループに別れているみたい。若い使い魔のグループは、満月の夜に絶対こだわらなくても、月齢が近ければいいやって考えで犯行に及ぶから、いつ事件が起きるか予測をつけにくい。でも……、未遂とはいえ事件が起きたってことは、Red Witchは今月も魔女の《心臓》を狙ってくると思う」
「今月も……?」
「Red Witchの犯行は、毎月、満月の夜に起きてるよ。被害者を出す前におれ達が犯人を特定できているものもけっこう多いんだ。残念ながら、今回みたいに特定できずに犠牲者を出してしまうこともあるけど……」
「そうなんですね。でも、だったらもっと……」
「テレビやネットニュースで報道されてる数が多いはずだって思うでしょ」
「はい……」