月夜の黒猫は、心を攫う




狼の使い魔に連れ去られかけた何日か後。

「瑠璃さん、ちょっといい?」

 夕食のあとに、蓮花さんに声をかけられた。

「これ、前に渡した使い魔除けに少し改良を加えてみたの。かなり鼻のいい使い魔でも魔女の気配に気付きにくくなっているはずよ」

 蓮花さんの部屋に呼ばれて渡されたのは、前にもらったのとよく同じ、瑠璃色のクリスタルの蓋がついた香水瓶だった。

「ありがとうございます」

「私のほうこそ、この前は危険な目に遭わせてごめんなさい……」

「いえ、蓮花さんは何も悪くないので気にしないでください」

 申し訳なさそうに目を伏せる蓮花さんに、私は慌てて首を横に振った。

 烏丸さんの話によると、何日か前に私を連れ去ろうとした狼の使い魔は、過去にRed Witchと少しだけ関わったことがあったようだ。

 どういう関りがあったのか詳しいことは私には教えてもらえなかったけど、確保した使い魔の男からは、NWIの捜査に有力になる情報も聞けたらしい。

 怖い思いはしたけど、捜査の役に立ったのならよかったと思う。

「明日からは。改良してもらったほうの香水をつけて学校に行きますね」

「ええ、そうしてもらえると嬉しい」

 新しくもらった香水の瓶を手のひらに包んでそう言うと、蓮花さんがふっと笑う。その笑顔はとても綺麗だ。