月夜の黒猫は、心を攫う


 さっきみたいに、ぎゅーっと抱きしめられるのもドキドキするけど、こんなふうにふいうちで引き寄せられるのも、すごくドキドキする。

 緊張して固まっていると、稀月くんがため息ともつかないような吐息を漏らした。

「ほんとうは、瑠璃の安全を考えたら、この部屋から出したくないし、誰とも連絡をとらせたくないんですよ」

「……、うん」

「でも、おれは結局、瑠璃に甘いので。あなたに嬉しそうな顔が見たくて許してしまうんです」

 ため息交じりに紡がれる言葉から、稀月くんが私を想ってくれている気持ちが伝わってきて。

 じわーっと頬が熱くなる。

「……、ありがとう」

 そっと上目遣いに見上げると、稀月くんがふっと眦を下げる。

 私を見つめる琥珀色の瞳は、どこまでも優しくて甘い。

 その瞳をぼんやりと見つめ返していると、稀月くんの指が私の顎に触れた。

「その表情(かお)も可愛いけど、お礼はキスを希望します」

「え……?」

 わずかに目を見開いた瞬間、稀月くんの顔が近付いてきて、そっと唇が重なる。

「香坂さんと連絡をとるのはいいけど、少しでも気になることがあったら、すぐにおれに言って」

 唇が離れたあと、鼻先が触れるくらいの近い距離で私の目を見ながら、稀月くんが念を押してきた。

「うん、わかった」

 稀月との距離が近すぎて、話が半分くらいしか耳に入ってこないけど……。

 真剣な目で見つめてくる稀月くんに、ドキドキしながら頷く。

「約束ですよ?」

「うん、約束する……」

 ぽわんと顔を熱らせながらうなずくと、

「いい子……」

 稀月くんがちゅっ、と私の唇にキスをした。